DX支援

「ひとり情シス」の限界|IT担当者がいない中小企業のDXの進め方

社内のIT業務を、一人で抱えていませんか。

パソコンの設定やアカウント管理。
ネットワーク障害や問い合わせへの対応。

日々の運用だけで時間が埋まり、DXの企画まで手が回らない方も多いはずです。

経営者からは、業務効率化を求められます。
現場からは、目の前の不具合が届きます。

その間に立つ担当者には、重い負担がかかります。

本記事では、この状態を「ひとり情シス」と呼びます。

専任者が一人の企業だけではありません。
総務や経理がITを兼任する企業も含みます。

大切なのは、担当者の努力を増やすことではありません。

仕事を分け、優先順位を決め、外部の力を使うことです。

この記事では、人員をすぐに増やせない中小企業でも実行できるDXの進め方を解説します。

「ひとり情シス」「情シス不在」が中小企業のDXを止める本当の理由

日々の運用がDXを考える時間を奪う

ひとり情シスの仕事は、予定どおりに進みません。

パソコンが起動しない。
メールが届かない。
共有フォルダに入れない。

こうした相談は、突然発生します。

一つひとつは小さな問題でも、対応が重なると一日が終わります。

DXには、現状調査と計画づくりが必要です。

しかし、緊急対応が優先されると、企画業務は後回しになります。

結果として、改善したい課題だけが積み上がります。

判断と情報が一人に集中している

担当者しか分からない設定が増えると、情報も属人化します。

  • 管理者アカウントの保管場所
  • ネットワーク機器の設定内容
  • 契約中のサービスと更新時期
  • 過去の障害と対処方法
  • ベンダーとのやり取りの経緯

担当者が休むと、確認できないことが増えます。

異動や退職があれば、運用の継続にも影響します。

これは担当者個人の問題ではありません。

情報を共有する仕組みがないことが原因です。

DXがIT担当者だけの仕事になっている

DXは、ツールを導入する仕事ではありません。

業務の流れや役割を見直す経営課題です。

経済産業省も、DXはIT部門だけではなく、経営側が関与すべき取組と位置づけています。※3

しかし、現場では情シスだけに任されることがあります。

予算は経営側が決めます。
業務要件は各部門が持っています。

それでも、調査や選定はIT担当者に集中します。

この状態では、担当者がどれだけ努力しても限界があります。

IPAの「DX動向2025」では、日本企業の8割超がDX人材の不足を回答しています。※1

中小企業白書でも、費用と推進人材の不足が主な課題として挙げられています。※2

したがって、採用だけに頼らない進め方が必要です。

ひとり情シスが人を増やさずDXを前進させる3つの考え方

考え方1:守る仕事と変える仕事を分ける

まず、情シス業務を二つに分けます。

一つは、既存環境を守る仕事です。
もう一つは、業務を変える仕事です。

守る仕事には、次の業務が含まれます。

  • アカウントと端末の管理
  • 問い合わせと障害への対応
  • セキュリティ更新
  • バックアップの確認
  • 契約とライセンスの管理

変える仕事には、次の業務が含まれます。

  • 業務課題の整理
  • 改善対象の優先順位づけ
  • ツールやベンダーの選定
  • 導入計画と運用設計
  • 効果測定と改善

両方を同じ予定表に入れると、緊急業務が勝ちます。

そのため、改善業務の時間を先に確保します。

たとえば、毎週二時間だけでも構いません。

経営側にも、その時間を守ってもらいます。

考え方2:DXの優先順位を三つの軸で決める

課題をすべて同時に解決する必要はありません。

むしろ、対象を絞る方が進めやすくなります。

優先順位は、次の三つで判断します。

  • 効果:時間や費用をどれだけ減らせるか
  • 緊急度:放置した場合の影響は大きいか
  • 実行負担:人員や費用をどれだけ使うか

効果が高く、負担が小さい業務から始めます。

具体例として、次のような業務があります。

  • 入退社時のアカウント発行
  • 定型的な申請と承認
  • 毎月発生するExcel集計
  • 問い合わせ履歴の共有
  • 契約更新日の管理

最初の取組は、小さくても問題ありません。

成果を確認できれば、次の予算を説明しやすくなります。

考え方3:内製と外注を役割で切り分ける

外注するか、内製するか。
二者択一で考える必要はありません。

自社が持つべき役割と、外部に任せる役割を分けます。

社内に残すべき役割は、次のとおりです。

  • 自社の目的を決める
  • 業務上の優先順位を決める
  • 最終的な意思決定をする
  • 現場の意見を集める
  • 導入後の責任者を決める

外部へ任せやすい役割は、次のとおりです。

  • 現状調査と課題の整理
  • 専門的な技術調査
  • 製品やベンダーの比較
  • 設計や設定などの実作業
  • プロジェクト管理の補助

判断まで外部へ渡すと、社内に知識が残りません。

反対に、すべてを内製すると担当者が疲弊します。

「判断は社内、専門作業は外部」が基本です。

一人で抱えたまま、次の施策を決める必要はありません。

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次の一手に加えて、経営層への説明材料も持ち帰れます。

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ひとり情シスを「丸投げさせない」伴走型支援で社内にノウハウを残す

外部へ任せるのは作業、社内に残すのは判断です

外部支援を使うこと自体は、問題ではありません。

中小企業は、人材や情報の不足を抱えやすいからです。

経済産業省も、中小企業のDXでは外部支援が関わる事例が多いとしています。※4

問題は、外部へ何を任せたか分からない状態です。

設定内容が共有されない。
選定理由が記録されない。

これでは、次の変更でも同じ支援先が必要になります。

伴走型支援では、作業の結果だけを渡しません。

判断の理由や進め方も、社内と共有します。

文書を残し、別の人でも判断できる状態にする

社内に残すべきものは、専門用語の多い報告書ではありません。

実際の業務で使える資料です。

  • システムと契約の一覧
  • 管理者アカウントの管理方針
  • 障害時の連絡先と対応手順
  • 要件と選定理由の記録
  • 運用担当者と承認者の役割
  • 今後の改善課題と優先順位

資料は、一度作って終わりではありません。

日常業務の中で更新できる量に絞ります。

更新できない文書は、すぐに古くなります。

したがって、項目と担当者を先に決めます。

小さな成功を社内の型に変える

DXは、一つの大きな計画で完成するものではありません。

小さな改善を積み重ねる取組です。

一つの業務で成果が出たら、進め方を振り返ります。

  • 誰が課題を見つけたか
  • 誰が意思決定したか
  • 何を基準に製品を選んだか
  • 現場へどう説明したか
  • どの指標で効果を確認したか

この流れを残すと、次の改善に使えます。

担当者が変わっても、同じ進め方を再現できます。

これが、社内にノウハウを残すということです。

ひとり情シスが一人で抱え込む前に、DXの進め方を壁打ちする

最初の30分で整理するべきこと

相談前に、立派な企画書を作る必要はありません。

次の内容を、分かる範囲で整理します。

  • 日々どの業務に時間を取られているか
  • 経営側から何を求められているか
  • 現場から多い相談は何か
  • 止まると困る業務は何か
  • 改善したい業務は何か

相談テーマは、一つだけでも構いません。

たとえば、アカウント管理でも十分です。

課題を具体化すると、次の一手が見えます。

経営層へ説明する材料を持ち帰る

ひとり情シスの方が困るのは、技術面だけではありません。

経営層への説明も大きな負担です。

「必要だから導入したい」だけでは、予算は通りにくいものです。

次の要素を整理すると、説明しやすくなります。

  • 現在発生している工数
  • 放置した場合の業務リスク
  • 改善後に期待する効果
  • 最初に必要な費用と期間
  • 社内と外部の役割分担

技術の話を、経営課題へ置き換えることが重要です。

その整理も、壁打ちの対象になります。

まとめ:ひとり情シスのDXは、抱え込まない設計から始めます

ひとり情シスを解消する方法は、採用だけではありません。

まず、守る仕事と変える仕事を分けます。

次に、効果と負担を見て優先順位を決めます。

そして、内製と外注の役割を切り分けます。

外部へ丸投げするのではありません。

判断とノウハウを社内に残しながら進めます。

コラセプタのDX促進支援では、現状整理から実行まで伴走します。

担当者だけに負荷が集中しない進め方を一緒に設計します。

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ひとり情シスと中小企業DXのよくある質問

Q1. ひとり情シスでもDXを進められますか?

A. 進められます。日常運用と改善業務を分け、対象を一つに絞ることが重要です。専門作業だけ外部へ任せる方法もあります。

Q2. 情シスがいない中小企業は何から始めるべきですか?

A. まず、IT業務と利用サービスを一覧にします。その後、工数・リスク・改善効果を基準に、優先順位を決めてください。

Q3. DXを外注するとベンダー依存になりませんか?

A. 判断理由や運用手順を社内へ残せば、依存を抑えられます。作業は外部へ任せ、目的と意思決定は社内で持つことが基本です。

参考資料

  1. IPA「DX動向2025」
  2. 中小企業庁「2025年版 中小企業白書 第5節 デジタル化・DX」
  3. 経済産業省「デジタルガバナンス・コード3.0」
  4. 経済産業省「支援機関を通じた中堅・中小企業等のDX支援の在り方に関する検討会」

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